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高次脳機能障害の元社員のブラウスが着られない「合理的」な理由 岐阜特例子会社裁判和解深掘り

愛知県名古屋市に本社を置く人材会社Man to Manの傘下にあるMan to Man Animo株式会社の岐阜県内にある営業所で働いていた、高次脳機能障害および強迫性障害を抱えた40代女性が起こした裁判の控訴審で、3月24日、名古屋高裁の松田敦子裁判官による和解案がまとめられ、成立した。

争点は、障害者雇用を目的に設立された「特例子会社」での高次脳機能障害の人への合理的配慮、障害のある労働者に対し障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な援助を等の措置を講じなければならない義務を怠った否かだった。

合理的配慮改善求める和解

報告集会で感謝の言葉を述べる女性(5月7日筆者撮影)

5月7日、岐阜市内で報告集会が行われた。集会はZoom含め60人以上参加。女性からの感謝の言葉、弁護団からの解説もあり、女性の母、女性が交通事故で受傷した当時の元担任教師、高次脳機能障害患者のリハビリや裁判に携わった医師もコメント。女性への明るい励ましに溢れた。

被告会社が支払う和解金は200万円で、これは高裁が合理的配慮違反について判断は示していないが、配慮違反があったという前提での金額。

そして和解調書の焦点は、被控訴人に対し、障害を持った労働者が働きやすい職場にするよう「合理的配慮指針」に基づいた職場に改善することが盛り込まれたこと。

被控訴人は、障害のある労働者の雇用において、障害に関する正しい知識の習得や当該労働者との話し合い、適切な記録化及びその継続的な検証等を通じ、当該労働者の障害の特性に関する理解を深め、その特性に配慮した必要な措置を講ずるなど、当該労働者がその有する能力を職場で発揮する上で支障となっている事情を改善し、その他厚生労働省策定の合理的配慮指針に沿った合理的配慮の提供が円滑に行われるよう、組織的な職場環境の改善に努めるものとする。

和解調書

報道各社はどう報じたか

朝日新聞は5月9日、紙面(岐阜県版の地方面)とデジタル版での掲載となった。デジタル版は、3枚の写真とともに931字で伝えた。裁判の経過と結果と合わせて、弁護団が「勝利和解」だと説明し、山本妙弁護士が「障害は個人の問題ではなく社会がつくりだしたもので、社会の側が障害をサポートする努力をしなければいけないという考え方が、和解条項に反映されている」と評価したこと、原告女性の「作業をするうえで自分の努力でカバーしきれない、最低限必要なことの協力を会社に求めた」「会社が障害を正しく理解していなければ、障害者を傷つけることにつながる」「多くの障害者は自分の力で働き、自立した生活をしたいと願っている。雇い主に言いたいことも言えないのが実情」などという言葉を伝えた。また記事の有料部分に、会社側にも取材し、「今まで通り、さらに上のレベルの職場環境を目指していく」という担当者のコメントがあったことも加えた。

岐阜新聞は5月9日、紙面とデジタル版で掲載となった。デジタル版は482字で、裁判の経過と結果を、原告女性の「望んでいた内容。社会の一人一人が意識を変えるきっかけとなってほしい」、会社側弁護士の「この件で話すことはない」という言葉とともに伝えた。

フリージャーナリストの引地達也氏は5月12日、女性が「目に見えない障がいを持つ人たちが自立できる社会にしていくため、『自分の力で働き、自立した生活をしたいと願っており、多くの障がい者も同じ思いだ』との思いを胸に、特例子会社は『あらゆる障がい者にとって数少ない働く場所であり、大切な居場所』だと指摘し、社会全体の問題だ」と訴えたことを伝えた。「今後、政府も企業も『質』を考えての障がい者雇用を検討する必要性を示したが、それは支援者も含む障がい者雇用に携わるすべての責任と受け止めたい」と結んだ。(1659字)

「ブラウスが着られない合理的な理由が気になる」

女性が着用したブラウス(支援組織提供)。中央に大きなひらひらとしたものが付いていた。「ひらひらとしたものが着いた服は、女性の身体に支障となり、仕事に集中できなくなる」と女性の支援者は述べた。

朝日新聞デジタルのニュースがヤフーニュースに掲載されると、コメント欄には、「ブラウスやスーツが着られない合理的な理由が気になります。」というコメントが書き込まれていた。筆者はこれに返信する形で、以下のコメントを入れた。

ブラウスやスーツが着られない合理的な理由が何なのか、新聞という限られたスペースで最小限の情報を伝えざるを得ない媒体では端折られているが、元社員は高次脳機能障害の症状により着られる服が制限され、ブラウスやスーツを着ると集中力や体調が悪化して仕事に支障をきたすほどになってしまう。これは「リハビリを重ねたが治らなかった」と元社員と医師で結論が出たものだった。 そのため元社員は、私服を認めることを訴えていた。そして入社当初は私服が「合理的配慮」として認められた。 しかし、上司が変わると引き継がれず、認められなくなった。上司は「社会人として必要な指導だからやった」という姿勢だった。そこが問題。 高次脳機能障害という難解な言葉だけが独り歩きしがちだが、「一般人が何の支障なく着られるブラウスやスーツが、身体の機能的に着られない人がいる」ということを知ることが大切な場面。

ヤフコメ欄

女性が配慮違反だと訴えた主なエピソードは、

・自由な服装から上司の言葉でブラウス着用した後、トイレにかかる時間が15~30分に増え、仕事は通常の半分しかこなせなくなった。また、翌日は疲労で調子が悪く、午前中欠勤をすることもあった。

・上司の言葉でスーツ着用した後、強迫症状が悪化し、トイレにかかる時間が40~50分になった。これと同時期に、前進会社から新体制になった会社の入社式には全員スーツを着てくるように、という指示があり、女性はスーツに近い服装で入社式に臨んだところ、ひどい頭痛と過呼吸が出た。

女性は、「ブラウスやスーツを着ると、襟や飾りがチラチラするのが目に入ることで注意力が削がれ集中できなくなる」と語った。

日本のメディアでの裁判報道では、判決が出てから内容を簡潔に伝えることが多く、その事件が抱える問題を掘り下げにくい傾向にある。しかし、双方の主張を機械的に示し、判決を垂れ流すだけでは、何が問題なのか読者は理解できないことも多い。障害のわかりにくさやあまりに生々しい当事者の声を聞くことになる居心地の悪さからか、障害のある人の労働問題がタブー視されたり、またそうした裁判へのアレルギー反応が起きたり、報道での限られたスペースで最小限を伝えるなかで端折られることになったりする現状がある。だが、断片的な情報のみが独り歩きし、誤解からくる推測での意見が広がったり、ネット上でのバッシングにもつながることがある。放っておけば、人はいつまでも誤解や偏見を修正することがないまま、ということになるのではないか。

ヤフーニュースのコメント欄。コメントは5月13日までに7件。

女性の意見陳述や集会での報告を聞き、筆者は「見えない障害のある当事者であれば共感する言葉だろう」と思った。当事者は、甘えたくて障害の説明をしているのではなく、楽をしたくてできないと言っているのではなく、必死に頑張っているけど、それでもどうしても出来ないことがある。見た目でそれはわからない。そこから自己理解を通して、個々に合わせた対処法を取って、社会生活を送っている。それでも個人ではどうしてもできないことを、建設的対話を通しての合理的配慮で解決しようということ。障害のある労働者が自己理解を通して個々に合わせた対処法を取ること、困りごとをわかりやすく伝えることが、社会の側への大きな歩み寄りであること。それ以上の努力を求めることは、二次障害の悪化にもつながり酷であるということ。

女性の描いた、パワーハラスメントの状況を伝える漫画(支援組織フェイスブックより)

一審では「会社側がブラウス着用を女性に勧めたことは、就労能力向上につながることであり、会社側からこのような指導があった時には労働者は努力すべき」とされた。控訴審で、原告弁護団は控訴理由書を読み上げ、「ブラウスを着用できないことが障害となるのは、”ブラウスを着用しての仕事が社会で広く行われているため、ブラウスを着用できないものは事実上就労に制限が加わることになる”という社会構造があるため。会社側の合理的配慮の義務とは、『ブラウスを着用しての仕事が広く社会で行われていること』を解消すること、周囲への周知を通じ、ブラウスを着用していなくてもそれを白眼視しない環境を整備することによって女性の就労への事実上の制限を解消すること。会社側がこのような措置を行ったかが問われなければならない」「ブラウスを着用しないでする労務提供を認めることや、そのことについて周囲に周知することは容易に可能であるから、『過重な負担』という観点から、被控訴人が合理的配慮の義務を尽くさなかったことが正当化されることはない」と主張。

被告会社側の控訴答弁書では、「職場において、女性の意向にそぐわない意見を完全に封殺し、一切の摩擦を抑止することが配慮義務というのは、健全な障害者雇用を萎縮させ阻害する」。これに対し、原告側は準備書面で「被告会社側の主張は、女性の主張をあえて誤読して論難するもの。女性はそのような判断などは求めていない。被告会社側の主張はいわゆる”わら人形論法”というべきものにすぎず反論になっていない」と再反論。

他の障害のある人の労働問題でも類似したような、当事者にとって酷なやりとりがされているのか、と憂う。

勝訴判決以上の意義、法律家の理解に課題も

名古屋高等裁判所(4月10日筆者撮影)

集会では、一審で物的証拠の不足に加えて、女性に障害があるがゆえに証言の信用性が認められなかったこと、裁判官の合理的配慮への判断基準を不服として、控訴に至ったことも述べられた。

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控訴審では、女性が残していた、携帯電話のメールの数々に、女性の証言を裏付ける事実が再現されており、これが逆転勝利和解につながった。

だが、「控訴までかかる負担を考えれば、メールは一審の段階で提出されていたら違った結果もあったのではないか?」筆者はそう考え、報告集会後に弁護団に尋ねてみた。すると、「女性が、もう壊れて使われていない古いガラケーを復元できるように、サポートするうえでの意思疎通に時間がかかった」と1人の弁護士は言った。

女性の支援者によると、女性の高次脳機能障害の特性から、弁護団との相互理解に時間を要してしまう場面もあったという。女性が退職したのは2016年だが、本訴に移行する前の労働審判は2019年と、この間にも3年のタイムラグがあった。この支援者は、強迫性障害、記憶障害、不潔障害など強い特性のある女性の言葉を、弁護団や裁判所との間で「通訳」する役目を果たした。例えば、「女性は不潔障害から一度地面に置いたものは触れられないため、荷物を地面でない場所に置くようにする工夫をした」という。

一審の証人尋問でも、弁護団の上申書により、女性の障害に対する合理的配慮は認められていた。①一定間隔の休憩等、②質問はわかりやすい一問一答、③ゆっくり丁寧にわかりやすく、④混乱させる質問をしない、⑤温和な雰囲気・緊張を伴いにくい環境で等。筆者がこの裁判を知ったのは尋問が終わった後だったので、傍聴はできなかったのだが、原告尋問の弁護団からの評価は「100点満点」だったという。しかし、尋問でそれほどの証言をしても、一審の裁判官には信用性が認められなかった。

原告弁護団は、パワーハラスメントを受けていた時の録音やビデオがないからこそ、「以前はできていた配慮が体制変更でできなくなったことや、復職に向けた面談で心理士や障害者職業センター担当者が職場改善を求めたことを会社側が拒否し、復職への道を閉ざしたことを問題視」していった。証拠では、一審では女性本人のmixi(日記)と、復職に向けた五者面談の記録(録音あり)などがあり、これらを提出していた。しかしそれで不十分だったことから、控訴審ではさらなる証拠の提出を模索し、携帯電話を復元したうえで女性と会社側関係者の双方が送受信したメールの記録をも加えることになった。

2月21日には主要な障害者の権利擁護団体の日本障害者協議会(JD)が「障害特性を理解し、合理的配慮義務の遵守を」とする声明を発表。声明文が裁判所に提出されることになった。

名古屋高裁では一回の期日で審理が打ち切られた後、裁判所から「被告会社側に不利な状況である」と伝えられたとみられ、被告会社側が判決を前に「全面降伏」する形となった。

和解調書では、被告会社が障害のある労働者の特性を理解する専門的知識の習得を怠り、高次脳機能障害や二次障害への配慮がなかったとみなし、具体的な改善を求める内容となった。「障害のある労働者」という言葉は、「障害は社会の側にある」という障害の社会モデルの考え方に立ったもの。

また裁判の経過では、被告会社側に女性にどのような指導・支援を行ったか、女性が社内でどのような相談をしていたかに関する記録がなく、元上司らが曖昧な記憶に頼った話を基に主張を組み立てるという有り様になっていた。原告側は控訴理由書で「(女性の)“日々・その場で取っていたメモに基づいてする話”との正確性と、(会社側の)”6年半から8年半前のことを思い出してする話”を比べて、後者が前者より信用できるとする根拠は通常存在しないにもかかわらず、原判決は、『原告は記憶力に障害がある上、発言内容が仮に正確であったとしても、それを正しく理解せずに記載している』と評価し、原告の障害故に信用ができないと決めつけたうえで事実認定を行っている」と一審判決に強く抗議していた。こうしたこともあり、「被告会社が記録を残していなかったのも問題。障促法には障害者雇用率の報告義務があることに照らせば、障害者の指導や支援に関する記録やその保管も同法の期待するところ」として、「適切な記録化及びその継続的な検証等を通じ」という内容も盛り込まれた。

上司が変わったことにより、合理的配慮方針が引き継がれなくなる。それでは意味がない、一部の従業員の理解だけでなく従業員全体の理解が必要であるとして「組織的な職場環境の改善に努める」とまとめられた。

報告集会で解説する森弘典弁護士(5月7日筆者撮影)

高裁の示した和解案は、「障害の社会モデルに立っており、判決よりも良い」と弁護団は評価。

判例が社会で広く使われている現状や、これまでに合理的配慮義務違反を認めた判例はほとんどない現状を鑑みれば、この領域で何らかの判例が望まれる、という見方もある。これに対し、和解では一般に、会社側に改善や再発防止を要請するなど、判決とは異なる柔軟な解決策を示すことができる。「判決を示されることで、担当の1人は変わるかもしれない。だけど、社会全体が変わらなければならない」と弁護団は報告集会でコメントした。過去の類似した和解事例には、知的障害のある労働者へのパワハラが問題となり、会社側に改善を求める内容が示された、いなげや事件の和解(2018年)があった。

高裁の和解は、高次脳機能障害など精神障害や、それと類似した発達障害の人への合理的配慮や、特例子会社のあり方を考えるうえで、重要な事例となりえる。

それとともに、障害の特性理解の上に立ち、適切に証拠収集や事実認定や判断を行えるように、合理的配慮の法律的根拠を確立できるように、法律家も勉強していくべき、という課題も浮き彫りになった。

筆者が和解成立後、名古屋高裁で裁判資料を閲覧したところ、提出された証拠が、女性側からはmixi日記、五者面談の記録、女性と当時の管理者による手書きの日報、メール復元、求人票、雇用契約書、医療機関の診断書・カウンセリング情報提供書・診療記録で、被告会社側からは女性の応募時の履歴書、当時の組織図、会社の教育カリキュラム、女性が社員として参加したセミナーで行った発表資料、女性が在職時に社員として書いた会社ブログの文字起こし、女性が社員としてメディアに出演した時の文字起こし。確かに、被告会社側に記録として残された形の証拠は少なかった。

専門家のコメント

深川和利医師

大同病院高次脳機能障害センター長。高次脳機能障害の患者のリハビリや裁判にも携わった)

高次脳機能障害は認知障害であり、患者が自分自身を把握するのは非常に難しい。女性は訓練を受けて、自分の得意なことと苦手なことを把握し、全部に対処するまで努力してきた。場所さえあれば何でもできる。前身会社では女性と環境の相互作用で、女性がやりたいことができる環境ができていた。それが障害特性を理解できない人が増えたことで、基本的な環境が壊れ、女性ができていたことができなくなり、悪くなっていった。基本的に裁判官は現実の高次脳機能障害の患者を見ておらず、理解できない。今回の和解はきちんと理解してくれた画期的なもの。だが今回認められたのは、医療が患者を送り出す社会に求めた最低限度の水準。高次脳機能障害は障害特性の理解が肝。社会で一人でも多くの人が知ること、これが支援を広げていくうえで大切だ。

大手障害者支援会社・就労支援事業部窓口

形式的な合理的配慮ではなく、病気や障害が正しく理解され、誤解や偏見の無い職場や社会になるために弊社も尽力してまいります。

国・県・市の取るべき対応は…

特例子会社は、一般の職場よりも手厚く障害に配慮された設備や環境が整えられ、スタッフも障害者雇用にノウハウのある人材が揃うことになっている。しかしその運営に関しては、親会社の意向、業種、規模によって変わってくるのが実態。被告会社はウェブ制作事業、ウェブアーカイブ(文書化)事業を運営していた。

障害者法制に詳しい森弘典弁護士は報告集会で、「特例子会社は、障害者雇用促進法44条で、『雇用する対象障害者である労働者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有する』『対象障害者である労働者の雇用の促進及び雇用の安定が確実に達成されると認められる』ことが必要条件となっている。特例子会社が法律で掲げる基準に適合しなくなったと認めるときは、厚生労働省が認定を取り消すことができるとも定められているが、現実にはそうなっていない」「(特例子会社の存在で親会社の雇用率が達成されるように)障害者雇用をめぐり政府は法定雇用率で数の保証はしているものの、質の保証をしているとは言い難い」「合理的配慮をめぐって相談体制の整備も定められているが、行政機関の紛争解決の申し立て受理、助言、指導の件数は年に一桁と非常に少ない」「多くの国や障害者権利条約が合理的配慮不提供が差別にあたると構成するが、日本はそう認識されていない。諸外国で定められている間接差別が日本では盛り込まれていない」と指摘。

厚労省発表によると、令和3年度にハローワークが行った合理的配慮の提供に関する助言・指導・勧告の件数は、助言は6件、指導は0件、勧告は0件。労働局長による紛争解決援助制度への申立受理件数は1件。障害者雇用調停会議による調停は6件。

被告会社はまた、岐阜県・愛知県・名古屋市で障害者を雇用する企業向けにノウハウを提供するなどの支援事業を受託していた。被告会社が令和4年に受託した行政事業は、同社ホームページによると以下の通り。

岐阜県障がい者雇用企業支援センター

あいち障害者雇用総合サポートデスク運営事業

名古屋市障害者就労支援窓口ウェルジョブなごや

名古屋市障害者理解に関する講師派遣事業

岐阜県障がい者雇用企業支援センター(ホームページをキャプチャー)

被告会社は令和5年度から7年度まで、岐阜県障がい者雇用企業支援センター事業委託業務を約1億1428万円で提案し、受託することになったことも、岐阜県のホームページでの3月9日付の発表でわかった。

公金での行政事業の運営者の適格性も問われることになる。他社に範を示す立場であるはずの同社がこれでいいのか。筆者が報告集会で弁護団の見解を尋ねると、「県や市が和解内容を知ってどうするかは、県や市が判断すること」と答えるにとどめた。

ある障害者雇用支援会社の関係者は、「愛知、岐阜など委託する側が、今後入札に応じないなど思い切った施策を取ってくれるといいなと思いつつ、今後の動向に注目していきたい」と語った。

被告会社が和解をどう受け止めているか、和解内容をどのように実践していくか、裁判の結果による行政事業への影響について、ホームページから問い合わせたところ、法廷でも証言した担当者の1人より、「ご存知の通り和解をしており、この件についての回答は差し控えさせていただきます。」という回答が返ってきた。

【追加注釈】高次脳機能障害の症状や特性や能力は一人一人異なり、サポート方法も異なります。高次脳機能障害のある人がすべて、この事例に示された症状や特性や能力を示すわけではありません。

【5月14日20時56分訂正】

1.筆者のヤフーニュースへのコメントで、「ブラウスやスーツを着ると集中力や体調が悪化して」とありましたが、当事者より「『集中力や体調が悪化して』という言葉でそれは伝わるでしょうか?」と指摘があり、本文に、「女性は、『ブラウスやスーツを着ると、例えば襟や飾りがチラチラするのが目に入ることで注意力が削がれ集中できなくなる』と語った。」という文を追加。

2.「復職に向けた面談で心理士やハローワーク担当者が職場改善を求めた」とありましたが、正しくは復職に向けた五者面談で職場改善を求めたのは「心理士や障害者職業センター担当者」でした。裁判資料によれば五者面談でハローワーク担当者は出席していませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。

【5月15日20時46分訂正】

1人の関係者の発言が、発言者の意図や前後関係が確認できず、直前の文章とつながらず読み手が混乱してしまう効果がある箇所があったため、削除しました。

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